孤立特異点の分類
孤立特異点を除去可能特異点、極、真性特異点の三種類に分類する。
これはローラン級数展開の主要部の様子による分類である。
また同値な条件として、特異点に近づくときの関数の振る舞いによる特徴づけもある。
除去可能特異点は本質的には特異点ではないような孤立特異点で、その点まで正則に関数を延長できる。
極はその特異点に近づくときに関数が無限大に発散するような孤立特異点で、特異性を持つが比較的扱いやすい。
真性特異点はこれらに比べて扱いにくい特異点である。
除去可能特異点
除去可能特異点
z=aがfの孤立特異点であるとする。
z=aを含めた領域で正則な関数gが存在して、z=aではf(z)=g(z)であるとき、z=aをfの除去可能特異点という。
除去可能特異点は見かけ上特異点のようになっているが、関数の値を適切に定め直すことで特異点を解消できるものである。
除去可能特異点のローラン級数による特徴づけ
z=aがfの除去可能特異点であることは、z=aの周りでのローラン級数展開の主要部が0であることと同値である。
除去可能特異点の漸近挙動による特徴づけ(リーマンの定理)
z=aがfの除去可能特異点であることは、aの近くでfが有界であること、すなわちあるϵ>0とM>0が存在して0<∣z−a∣<ϵならば∣f(z)∣≤Mとなることと同値である。
証明
有界ならば主要部が0であることを見れば十分である。
ローラン係数の積分表示から、0<r<ϵに対し
∣a−m∣=2πi1∫∣ζ−a∣=r(ζ−a)−m+1f(ζ)dζ≤2π1⋅Mrm−1⋅2πr=Mrmである。
m≥1のときr→0で右辺は0に収束し、a−mはrによらないからa−m=0である。
除去可能特異点の例
f(z)=zez−1およびf(z)=zsinzはいずれもz=0を除去可能特異点に持つ。
いずれの場合もf(0)=1と定めればz=0を含めて正則となる。
極
極
z=aがfの孤立特異点であるとする。
limz→af(z)=∞であるとき、z=aをfの極という。
極のローラン級数による特徴づけ
z=aがfの極であることは、z=aの周りでのローラン級数展開の主要部が0でない有限和であることと同値である。
極の漸近挙動による特徴づけ
z=aがfの極であることは、limz→a∣f(z)∣=∞であることと同値である。
これはf1を考えることで除去可能特異点の場合に帰着できる。
∣f∣→∞ならaの近くでf1は有界なので、上のリーマンの定理からz=aはf1の除去可能特異点であり、延長した関数はaで0になる。
その零点の位数がfの極の位数である。
極の例
f(z)=z(z−1)1はz=0およびz=1にそれぞれ1位の極を持つ。
z=0の周りでのローラン級数展開の主要部は−z−1であり、留数は−1である。
真性特異点
真性特異点
z=aがfの孤立特異点であり、除去可能特異点でも極でもないとき、z=aをfの真性特異点という。
真性特異点のローラン級数による特徴づけ
z=aがfの真性特異点であることは、z=aの周りでのローラン級数展開の主要部が無限和であることと同値である。
例えばe1/zやsinz1はz=0を真性特異点に持つ。
カゾラーティ・ワイエルシュトラスの定理
z=aがfの真性特異点のとき、任意の複素数wに対し、aに収束する点列znでf(zn)→wとなるものがとれる。
すなわちfのaの近くでの像はCで稠密である。
この定理の証明はここでは省略する。
上の二つの特徴づけと違って、短い計算では済まないためである。
なお主張は「任意の値にいくらでも近づく」であって「任意の値を実際にとる」ではないことに注意しよう。
後者まで言えるのがピカールの定理で、高々一つの例外を除いて実際に全ての値をとる。
近づけ方も連続的な曲線である必要はなく、点列で十分である。
真性特異点の例
f(z)=e1/zはz=0を真性特異点に持つ。
z=1/(a+bi)とするとf(z)=ea+bi=ea(cosb+isinb)である。
a=0と固定してb→∞とすればz=1/(bi)→0であり、f(z)=cosb+isinbは単位円周上を回り続ける。
特にbn=θ+2πnとすればn→∞でz→0であり、f(z)=cosθ+isinθとなるから、任意のeiθに収束する列が得られる。