偏角の原理

有理型関数f(z)f(z)をz=az=aの周りでローラン級数展開すると、f′(z)f(z)\dfrac{f'(z)}{f(z)}のz=az=aでの留数がffの零点や極の位数で表せることが分かる。

実際ffがz=az=aでhh位の零点を持つとき、g(a)≠0g(a)\neq0なる正則関数ggを用いてf(z)=(z−a)hg(z)f(z)=(z-a)^hg(z)と書けるので

f′(z)f(z)=hz−a+g′(z)g(z)\frac{f'(z)}{f(z)}=\frac{h}{z-a}+\frac{g'(z)}{g(z)}

となり、留数はhhである。 hh位の極の場合はf(z)=(z−a)−hg(z)f(z)=(z-a)^{-h}g(z)として同様に留数は−h-hとなる。

これを留数定理と組み合わせると次が得られる。

偏角の原理

f(z)f(z)はΩ\Omegaで有理型で、その零点をa1,…,ana_1,\ldots,a_n、極をb1,…,bmb_1,\ldots,b_mとする。 Ω\Omegaに関して00にホモローグで零点も極も通らない任意のサイクルCCに対し

12πi∫Cf′(z)f(z)dz=∑i=1nn(C,ai)−∑j=1mn(C,bj)\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{f'(z)}{f(z)}dz=\sum_{i=1}^nn(C,a_i)-\sum_{j=1}^mn(C,b_j)

となる。

ここで零点と極は位数の分だけ重複して数えるものとする。

偏角の増加量としての解釈

ffによるCCの像をΓ\Gammaとし、w=f(z)w=f(z)とすると

12πi∫Cf′(z)f(z)dz=12πi∫Γdww=n(Γ,0) \frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{f'(z)}{f(z)}dz=\frac{1}{2\pi i}\int_\Gamma\frac{dw}{w}=n(\Gamma,0)

となる。 つまりこの積分は、zzがCCを一周する間にf(z)f(z)が原点の周りを何周するかを数えている。 dww=d(log⁡w)=d(log⁡∣w∣)+i d(arg⁡w)\dfrac{dw}{w}=d(\log w)=d(\log\lvert w\rvert)+i\,d(\arg w)であり、一周するとlog⁡∣w∣\log\lvert w\rvertは元に戻るので、残るのは偏角の増加量である。 これが「偏角の原理」という名前の由来である。

一般化

さらに次のように一般化できる。 g(z)g(z)をΩ\Omegaで正則とすると、g(z)f′(z)f(z)g(z)\dfrac{f'(z)}{f(z)}はffのhh位の零点z=az=aでは留数hg(a)hg(a)をもち、 ffのhh位の極では留数−hg(a)-hg(a)を持つ。 よって

12πi∫Cg(z)f′(z)f(z)dz=∑i=1nn(C,ai)g(ai)−∑j=1mn(C,bj)g(bj) \frac{1}{2\pi i}\int_Cg(z)\frac{f'(z)}{f(z)}dz=\sum_{i=1}^nn(C,a_i)g(a_i)-\sum_{j=1}^mn(C,b_j)g(b_j)

が成り立つ。

演習

偏角の原理を確かめる

f(z)=(z−1)2z+2f(z)=\dfrac{(z-1)^2}{z+2}について、CCを∣z∣=3\lvert z\rvert=3の反時計回りの円周として

12πi∫Cf′(z)f(z)dz\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{f'(z)}{f(z)}dz

を求めよ。

解答

ffの零点はz=1z=1(22位)、極はz=−2z=-2(11位)である。 いずれも∣z∣=3\lvert z\rvert=3の内部にあり、CCは各点を反時計回りに11周するので回転数は11である。

偏角の原理により

12πi∫Cf′(z)f(z)dz=(零点の個数)−(極の個数)=2−1=1\frac{1}{2\pi i}\int_C\frac{f'(z)}{f(z)}dz =(\text{零点の個数})-(\text{極の個数})=2-1=1

である。 ここで零点と極は位数の分だけ重複して数える。

この値はffによるCCの像Γ\Gammaの原点に関する回転数でもある。 つまりzzが∣z∣=3\lvert z\rvert=3を一周する間に、f(z)f(z)は原点の周りを11周する。