複素平面上の図形と一次分数変換

複素平面上の直線と円を、複素数zzとその共役zˉ\bar zを使って表そう。 そのうえで、直線と円をまとめて扱う一次分数変換を導入する。

複素平面における直線

xyxy座標平面における直線はx,yx, yの一次式で表すことができた。 複素平面においては、zzとzˉ\bar{z}の一次式でも表すことができる。 例えばz−zˉ=0z-\bar{z}=0が実軸、z+zˉ=0z+\bar{z}=0が虚軸である。 α≠0\alpha\neq0とすると、αz−αz‾=0\alpha z-\overline{\alpha z}=0が原点とz=αˉz=\bar{\alpha}を通る直線、 α(z−β)−α(z−β)‾=0\alpha(z-\beta)-\overline{\alpha(z-\beta)}=0がz=βz=\betaを通る直線である。 α=0\alpha=0では式が恒等的に成り立ってしまい、直線を定めない。

複素平面における円

平面における円は、ある点(中心)から等しい距離(半径)にある点の集まりである。

r>0r>0とする。 ∣z∣=r\lvert z\rvert=rは原点中心で半径rrの円の方程式である。 また、∣z−α∣=r\lvert z-\alpha\rvert=rは点α\alphaを中心とする半径rrの円の方程式である。

一次分数変換と円

一次分数変換

a,b,c,d∈Ca, b, c, d\in\Cがad−bc≠0ad-bc\neq 0を満たすとき、

w=az+bcz+dw=\dfrac{az+b}{cz+d}

を一次分数変換(メビウス変換)という。

一次分数変換は、平行移動z↦z+bz\mapsto z+b、拡大回転z↦azz\mapsto az、反転z↦1zz\mapsto\dfrac{1}{z}の合成で表すことができる。

一次分数変換w=az+bcz+dw=\dfrac{az+b}{cz+d}により、円∣w∣=k\lvert w\rvert = kにうつるzzの条件を求めよう。

∣az+bcz+d∣=k\left\lvert\dfrac{az+b}{cz+d}\right\rvert=kを整理する。

∣az+b∣=k∣cz+d∣∣a∣∣z+ba∣=k∣c∣∣z+dc∣∣z+ba∣:∣z+dc∣=k∣c∣:∣a∣ \lvert az+b\rvert=k\lvert cz+d\rvert\\\\ \lvert a\rvert\left\lvert z+\dfrac{b}{a}\right\rvert=k\lvert c\rvert\left\lvert z+\dfrac{d}{c}\right\rvert\\\\ \left\lvert z+\dfrac{b}{a}\right\rvert:\left\lvert z+\dfrac{d}{c}\right\rvert=k\lvert c\rvert:\lvert a\rvert

となる。 ここではa≠0a\neq0かつc≠0c\neq0としている。 −ba-\dfrac{b}{a}からの距離と−dc-\dfrac{d}{c}からの距離の比がk∣c∣:∣a∣k\lvert c\rvert : \lvert a\rvertになる点の集まりが求める集合である。

比が11でなければ、これはアポロニウスの円である。 比が11のとき、すなわちk∣c∣=∣a∣k\lvert c\rvert=\lvert a\rvertのときは、二点から等距離にある点の集まりなので垂直二等分線になる。

一般に、一次分数変換は円と直線を円と直線にうつすことが知られている。

C\Cに無限遠点∞\inftyを付け加えた集合をリーマン球面という。 c≠0c\neq0のとき、一次分数変換はz=−d/cz=-d/cで定義されないが、f(−d/c)=∞,f(∞)=a/cf(-d/c)=\infty, f(\infty)=a/cと定めることでリーマン球面からリーマン球面への全単射となる。 c=0c=0のときはf(z)=(az+b)/df(z)=(az+b)/dという一次関数であり、f(∞)=∞f(\infty)=\inftyと定めればよい。

リーマン球面における「円」とは、通常の複素平面における円、または直線に無限遠点∞\inftyを付け加えたもののことである。 直線に∞\inftyを加えると、リーマン球面の上では閉じた曲線になる。 一次分数変換はリーマン球面の「円」を「円」にうつす。

実軸を単位円周に写す一次分数変換

w=z−iz+iw=\dfrac{z-i}{z+i}とする。

  1. zzが実数のとき∣w∣=1\lvert w\rvert=1となることを示せ。
  2. z=−iz=-iとz=∞z=\inftyの行き先を調べよ。
解答

1. z=xz=x(実数)のとき

∣z−i∣=x2+1,∣z+i∣=x2+1\lvert z-i\rvert=\sqrt{x^2+1},\qquad \lvert z+i\rvert=\sqrt{x^2+1}

であるから∣w∣=1\lvert w\rvert=1である。 つまり実軸は単位円周にうつる。

2. z=−iz=-iでは分母が00になるので、リーマン球面の約束によりw=∞w=\inftyとする。 z=∞z=\inftyでは、分子と分母の最高次の係数の比をとってw=1w=1である。

なお実軸は∞\inftyを加えるとリーマン球面上の「円」になり、それが単位円周にうつっている。 上半平面は単位円板の内部にうつることも、z=iz=iがw=0w=0にうつることから分かる。