有理関数の無限区間上の定積分

11+x4\dfrac{1}{1+x^4} の積分
∫−∞∞11+x4dx=π2\int^\infty_{-\infty}\frac{1}{1+x^4}dx=\frac{\pi}{\sqrt{2}}

を示す。

実数R>1R>1に対して、ARA_Rを原点中心半径RRの上半円の正の向き、IRI_Rを閉区間[−R,R][-R, R]負から正への向きとする。 十分大きなRRに対する閉曲線CR=AR+IRC_R=A_R+I_Rでの線積分

∫CR11+z4dz\int_{C_R}\frac{1}{1+z^4}dz

を留数定理を用いて計算する。

f(z)=11+z4f(z)=\dfrac{1}{1+z^4}は1+z4=01+z^4=0の解z=eπi/4,e3πi/4,e5πi/4,e7πi/4z=e^{\pi i/4}, e^{3\pi i/4}, e^{5\pi i/4}, e^{7\pi i/4}でそれぞれ11位の極を持つ。 これらのうちCRC_Rの内部にあるのはz=eπi/4,e3πi/4z=e^{\pi i/4}, e^{3\pi i/4}の二つである。 それぞれにおけるffの留数を求めよう。 ロピタルの定理を使って計算すると、

lim⁡z→eπi/4z−eπi/41+z4=14e3πi/4lim⁡z→e3πi/4z−e3πi/41+z4=14eπi/4\lim_{z\to e^{\pi i/4}}\frac{z-e^{\pi i/4}}{1+z^4}=\frac{1}{4e^{3\pi i/4}}\\\\ \lim_{z\to e^{3\pi i/4}}\frac{z-e^{3\pi i/4}}{1+z^4}=\frac{1}{4e^{\pi i/4}}

である。 よって、留数定理により

∫CR11+z4dz=2πi(e−3πi/4+e−πi/44)=πi2(−2i12)=π2\int_{C_R}\frac{1}{1+z^4}dz=2\pi i\left(\frac{e^{-3\pi i/4}+e^{-\pi i/4}}{4}\right)=\frac{\pi i}{2}(-2i\frac{1}{\sqrt{2}})=\frac{\pi}{\sqrt{2}}

となる。 これはRRには依存しない。

次に、IRI_Rにおける線積分を計算する。 IRI_Rをγ(t)=t\gamma(t)=tでパラメータづけると

∫IR11+z4dz=∫−RR11+t4dt\int_{I_R}\frac{1}{1+z^4}dz=\int^R_{-R}\frac{1}{1+t^4}dt

である。 これのR→∞R\to\inftyの極限が求める積分である。

広義積分の存在も確かめておく。 11+x4\dfrac{1}{1+x^4}は連続で、∣x∣≥1\lvert x\rvert\geq1では11+x4≤1x4\dfrac{1}{1+x^4}\leq\dfrac{1}{x^4}であり、 ∫1∞dxx4\displaystyle\int_1^\infty\frac{dx}{x^4}は収束する。 よって絶対可積分であり、広義積分は存在して上の極限と一致する。

最後にARA_Rにおける線積分を計算する。 実際には、これがR→∞R\to\inftyで00に収束することを証明する。 そのため、絶対値を評価する。 まず積分の三角不等式により

∣∫AR11+z4dz∣≤∫AR∣11+z4∣∣dz∣\left\lvert\int_{A_R}\frac{1}{1+z^4}dz\right\rvert \leq\int_{A_R}\left\lvert\frac{1}{1+z^4}\right\rvert\lvert dz\rvert

である。 ここでさらに∣z∣=R\lvert z\rvert=Rのとき、RRが十分大きければ、三角不等式よりR4−1≤∣1+z4∣R^4-1\leq \lvert1+z^4\rvertとなる。 よって、

∫AR∣11+z4∣∣dz∣≤∫AR1R4−1∣dz∣=πRR4−1\int_{A_R}\left\lvert\frac{1}{1+z^4}\right\rvert\lvert dz\rvert \leq\int_{A_R}\frac{1}{R^4-1}\lvert dz\rvert=\frac{\pi R}{R^4-1}

となる。 これはR→∞R\to\inftyで00に収束するので、

lim⁡R→∞∫AR11+z4dz=0\lim_{R\to\infty}\int_{A_R}\frac{1}{1+z^4}dz=0

である。

以上より

π2=∫IR11+z4dz+∫AR11+z4dz\frac{\pi}{\sqrt{2}}=\int_{I_R}\frac{1}{1+z^4}dz+\int_{A_R}\frac{1}{1+z^4}dz

で、R→∞R\to\inftyの極限をとることで、

π2=∫−∞∞11+x4dx\frac{\pi}{\sqrt{2}}=\int_{-\infty}^\infty\frac{1}{1+x^4}dx

が得られる。

1x3+1\dfrac{1}{x^3+1} の積分
∫0∞1x3+1dx=2π33\int^\infty_0\frac{1}{x^3+1}dx=\frac{2\pi}{3\sqrt{3}}

を示す。

ここでは半円ではなく角2π3\dfrac{2\pi}{3}の扇形を使う。 理由はz3z^3の対称性にある。 ω=e2πi/3\omega=e^{2\pi i/3}とするとω3=1\omega^3=1なので(ωz)3=z3(\omega z)^3=z^3であり、被積分関数1z3+1\dfrac{1}{z^3+1}はz↦ωzz\mapsto\omega zで不変である。

したがって戻りの半直線(偏角2π3\dfrac{2\pi}{3})に沿った積分が、実軸上の積分の定数倍で書ける。 その結果、求める積分について一次方程式が立ち、解くことができる。

半円を使うとうまくいかない。 1x3+1\dfrac{1}{x^3+1}は偶関数でないので∫0∞\int_0^\inftyを∫−∞∞\int_{-\infty}^\inftyに直せず、しかも実軸の負の部分に極z=−1z=-1が乗ってしまうからである。 一般に整数n≥2n\geq2に対し、1xn+1\dfrac{1}{x^n+1}では角2πn\dfrac{2\pi}{n}の扇形をとる。

f(z)=1z3+1f(z)=\dfrac{1}{z^3+1}とおく。 R>1R>1とし、IRI_Rを実軸の00からRRに向かう線分、ARA_Rを半径RRの円弧のうち偏角が00から2π3\dfrac{2\pi}{3}の部分、 JRJ_Rをz=Rexp⁡(2π3i)z=R\exp(\frac{2\pi}{3}i)からz=0z=0を結ぶ線分とし、CR=IR+AR+JRC_R=I_R+A_R+J_Rとする。

CRC_R内部にあるffの極はz3+1=0z^3+1=0の解のうちz=eπi/3z=e^{\pi i/3}のみである。 ∣eπi/3∣=1\lvert e^{\pi i/3}\rvert=1なので、これが内部に入るためにR>1R>1が要る(R=1R=1では極が円弧の上にある)。 ここでのffの留数は、ロピタルの定理を用いて

lim⁡z→eπi/3z−eπi/3z3+1=13e2πi/3\lim_{z\to e^{\pi i/3}}\frac{z-e^{\pi i/3}}{z^3+1}=\frac{1}{3e^{2\pi i/3}}

と計算できる。 よって、留数定理により

∫CRf(z)dz=2πi13e2πi/3\int_{C_R}f(z)dz=2\pi i\frac{1}{3e^{2\pi i/3}}

である。

この左辺の積分を三つの曲線に分けて計算する。

まずIRI_Rでの積分は

∫IRf(z)dz=∫0R1x3+1dx\int_{I_R}f(z)dz=\int^R_0\frac{1}{x^3+1}dx

であり、R→∞R\to\inftyとしたものが求めるべき積分である。

次にJRJ_Rでの積分は また、

∫JRf(z)dz=∫R01(xexp⁡(2π3i))3+1e2πi/3dx=−e2πi/3∫0R1x3+1dx\int_{J_R}f(z)dz=\int^0_R\frac{1}{(x\exp(\frac{2\pi}{3}i))^3+1}e^{2\pi i/3}dx=-e^{2\pi i/3}\int^R_0\frac{1}{x^3+1}dx

である。

最後にARA_Rでの積分を三角不等式を用いて評価すると、

∣∫ARf(z)dz∣≤∫02π/3∣RieiθR3e3iθ+1∣dθ≤∫02π/3RR3−1dθ=RR3−12π3\left\lvert\int_{A_R}f(z)dz\right\rvert \leq \int_0^{2\pi/3}\left\lvert\frac{Rie^{i\theta}}{R^3e^{3 i\theta}+1}\right\rvert d\theta \\\\ \leq\int_0^{2\pi/3}\frac{R}{R^3-1}d\theta =\frac{R}{R^3-1}\frac{2\pi}{3}

となる。 これはR→∞R\to\inftyで00に収束するため、

lim⁡R→∞∫ARf(z)dz=0\lim_{R\to\infty}\int_{A_R}f(z)dz=0

である。

以上をまとめると、

2πi3e2πi/3=(1−e2πi/3)∫0R1x3+1dx+∫AR1z3+1dz\frac{2\pi i}{3e^{2\pi i/3}} = (1-e^{2\pi i/3})\int^R_0\frac{1}{x^3+1}dx+\int_{A_R}\frac{1}{z^3+1}dz

である。

この式でR→∞R\to\inftyとすることで、

2πi3e2πi/3=(1−e2πi/3)∫0∞1x3+1dx\frac{2\pi i}{3e^{2\pi i/3}} = (1-e^{2\pi i/3})\int^\infty_0\frac{1}{x^3+1}dx

となる。 よって、

∫0∞1x3+1dx=2πi3e−2πi/3(1−e2πi/3)−1=2π33\int^\infty_0\frac{1}{x^3+1}dx=\frac{2\pi i}{3}e^{-2\pi i/3}(1-e^{2\pi i/3})^{-1} =\frac{2\pi}{3\sqrt{3}}

となる。

1xn+1\dfrac{1}{x^n+1} の積分

n≥2n\geq2なる整数nnに対し

∫0∞1xn+1dx=πnsin⁡(π/n)\int^\infty_0\frac{1}{x^n+1}dx=\frac{\pi}{n\sin(\pi/n)}

を示せ。

ヒント:n=3n=3の場合と同じく、角2πn\dfrac{2\pi}{n}の扇形を積分路にとる。

  • 扇形の内部にある極はz=eπi/nz=e^{\pi i/n}の一つだけである
  • 戻りの半直線上ではz=e2πi/nxz=e^{2\pi i/n}xとなるので被積分関数の寄与がe2πi/ne^{2\pi i/n}倍になり、 実軸上の積分の(1−e2πi/n)\bigl(1-e^{2\pi i/n}\bigr)倍が残る
  • 円弧の寄与は、n≥2n\geq2よりRRn−1→0\dfrac{R}{R^n-1}\to0となって消える

n≥2n\geq2という条件がどこで効いているかを確かめよう。 またn=2n=2とすると∫0∞dxx2+1=π2\displaystyle\int^\infty_0\frac{dx}{x^2+1}=\frac{\pi}{2}となり、既知の値と一致することを確かめよ。

重極をもつ広義積分:手順を自分で組み立てる
∫−∞∞dx(1+x2)2\int^\infty_{-\infty}\frac{dx}{(1+x^2)^2}

を求めよ。 計算だけでなく、次の各段階について理由を述べること。

  1. この広義積分が収束すること
  2. どの積分路を選ぶか、なぜそれでよいか
  3. 積分路の内部にある極とその位数
  4. その極における留数
  5. 円弧に沿った積分がR→∞R\to\inftyで消えること
解答

1. 収束。 被積分関数は実軸上で連続であり、∣x∣→∞\lvert x\rvert\to\inftyで1x4\dfrac{1}{x^4}と同程度に減衰する。 ∫1∞dxx4\displaystyle\int^\infty_1\frac{dx}{x^4}が収束するので、この広義積分は絶対収束する。

2. 積分路。 被積分関数は偶関数で実軸全体の積分なので、上半円周で閉じる標準の形が使える。 R>1R>1とし、IRI_Rを実軸上−R-RからRRまで、ARA_Rを原点中心半径RRの上半円周としてCR=IR+ARC_R=I_R+A_Rとする。 f(z)=1(1+z2)2f(z)=\dfrac{1}{(1+z^2)^2}は実軸上に極を持たないので、迂回や主値を考える必要はない。

3. 極と位数。 1+z2=(z−i)(z+i)1+z^2=(z-i)(z+i)だから

f(z)=1(z−i)2(z+i)2f(z)=\frac{1}{(z-i)^2(z+i)^2}

であり、z=±iz=\pm iがいずれも22位の極である。 上半平面にあるのはz=iz=iだけで、∣i∣=1\lvert i\rvert=1なのでR>1R>1のときCRC_Rの内部に入る。

4. 留数。 22位の極なので

Res⁡z=if(z)=lim⁡z→iddz[(z−i)2f(z)]=lim⁡z→iddz1(z+i)2=lim⁡z→i−2(z+i)3\Res_{z=i}f(z)=\lim_{z\to i}\frac{d}{dz}\left[(z-i)^2f(z)\right] =\lim_{z\to i}\frac{d}{dz}\frac{1}{(z+i)^2} =\lim_{z\to i}\frac{-2}{(z+i)^3}

である。 (2i)3=−8i(2i)^3=-8iだから、留数は−2−8i=14i\dfrac{-2}{-8i}=\dfrac{1}{4i}である。

単純極のときのように分母を微分して代入するだけでは済まない点に注意しよう。 位数が22なので、(z−i)2(z-i)^2を掛けてから11回微分する必要がある。

5. 円弧。 ∣z∣=R\lvert z\rvert=Rでは∣1+z2∣≥R2−1\lvert 1+z^2\rvert\geq R^2-1だから

∣∫ARf(z)dz∣≤πR(R2−1)2=O(R−3)\left\lvert\int_{A_R}f(z)dz\right\rvert\leq\frac{\pi R}{(R^2-1)^2}=O(R^{-3})

であり、R→∞R\to\inftyで00に収束する。

結論。 留数定理より

∫CRf(z)dz=2πi⋅14i=π2\int_{C_R}f(z)dz=2\pi i\cdot\frac{1}{4i}=\frac{\pi}{2}

であり、R→∞R\to\inftyとすると円弧の寄与が消えるので

∫−∞∞dx(1+x2)2=π2\int^\infty_{-\infty}\frac{dx}{(1+x^2)^2}=\frac{\pi}{2}

を得る。

検算として、x=tan⁡θx=\tan\thetaと置換すると∫−π/2π/2cos⁡2θ dθ=π2\displaystyle\int^{\pi/2}_{-\pi/2}\cos^2\theta\,d\theta=\dfrac{\pi}{2}となり一致する。