正則関数の例と初等関数の正則性

それでは正則関数の例について見ていこう。

f(z)=z2f(z)=z^2の一次近似

f(z)=z2f(z)=z^2z=αz=\alphaの周りで一次式2α(zα)+α22\alpha(z-\alpha)+\alpha^2で近似できる。 これを図示して確かめよう。 f(z)=z2f(z)=z^2で実軸平行な直線や虚軸平行な直線がどのように映るかを書いてみる。

znz^nの正則性

nn00以上の整数としてf(z)=znf(z)=z^nは正則関数である。

正則関数の四則演算

正則関数どうしの和や積は正則関数である。 正則関数の比は分母が00でない範囲で正則。

多項式の正則性

zzについての多項式は正則関数である。

有理式の正則性

zzについての有理式は、分母が00になる点を除いて正則関数である。

それでは正則でない関数にはどのようなものがあるか。

f(z)=zˉf(z)=\bar{z}の非正則性

f(z)=zˉf(z)=\bar{z}は正則ではない。

まず直感的な説明をする。 f(z)=az+bf(z)=az+bと近似できるのであれば、実軸と虚軸の角は保たれる。 ところが、f(z)f(z)でうつすと実軸と虚軸の向きが逆になる。 よって、一次式で近似することはできない。

また、これは等角ではないため正則ではないということもできる。 複素係数の一次式で近似できるなら、近似的には等角である。 回転拡大と平行移動は等角なため。

また、f(z)=xiyf(z)=x-iyを二変数関数と見たとき、A=(1001)A=\begin{pmatrix}1&0\\\\0&-1\end{pmatrix}f(z)f(z)を近似する(この場合には近似ではなくて一致するが)行列となる。

定義に直接基づいた証明も行おう。 hhが実数で近づいた場合と、純虚数で近づいた場合に極限値が異なることを確かめる。 z=x+iyz=x+iyとして

limh0,hR(x+hiy)(xiy)h=1limh0,hR(xi(y+h))(xiy)ih=1 \lim_{h\to0, h\in\mathbb{R}}\frac{(x+h-iy)-(x-iy)}{h}=1 \lim_{h\to0, h\in\mathbb{R}}\frac{(x-i(y+h))-(x-iy)}{ih}=-1

となるので、微分可能でない。

演習問題

f(z)=zf(z)=\lvert z \rvertは正則ではないことを示せ。

初等関数の正則性

指数関数

三角関数

cosz=eiz+eiz2 \cos z = \dfrac{e^{iz}+e^{-iz}}{2} sinz=eizeiz2i \sin z = \dfrac{e^{iz}-e^{-iz}}{2i}

と定義した。

指数関数が正則であること、また正則関数の和が正則関数であることから、三角関数も正則関数であることがわかる。

また、(cosz)=sinz,(sinz)=cosz(\cos z)'=-\sin z, (\sin z)'=\cos zであることも指数関数の導関数から計算できる。

ちなみに、後ほど証明する正則関数の一致の定理によれば、 二つの関数f(z),g(z)f(z), g(z)zRz\in\mathbb{R}で一致するならばf=gf=gであることが証明できる。 したがって、拡張が正則になればそれが唯一の正則な拡張であることが保証される。

対数関数

例えばz=1z=1θ=0\theta=0と選んだとき、 単位円周を反時計回りに一周動いてlogz\log zの値の変化をみてみる。 このときr=1r=1で一定で、θ\thetaが連続的に増加させると、11周回ってz=1z=1に戻ったときにθ=2π\theta=2\piになる。 つまり、C\mathbb{C}上で一価正則関数としてlogz\log zを定義できないということになる。 これはz=0z=0の周りを回ることによって不定性が生じるからである。

対数関数logx\log xの微分が1x\dfrac{1}{x}であったことから、1x1tdt=log(x)\int^x_1\frac{1}{t}dt=\log(x)である。 同様の計算は複素数の範囲で行うことができるが、上の結果から積分の結果が一意に定まらないように思える。 実はあとで複素線積分やコーシーの積分定理などについて学んでみると

logz=1z1tdt \log z=\int^z_1\frac{1}{t}dt

という積分の値が経路によって変化するという現象に対応していることがわかる。

冪乗関数